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5月31日更新
 一回目は、香川県琴平町で刀剣研師をされている真宮猛さんのお話です。事務局YYコンビで伺いました。何しろ一回目ですから、インタビュアーもカメラマンも不慣れでしたが、私たちがお店にお邪魔すると、真宮さんは快くお話を聞かせてくれました。(真宮さんは古美術品のお店もなさっています。)
プロフィール】
大正10年生まれ
岡山県出身
18歳の時から研ぎをはじめる。
香川県で唯一の刀剣研師であり、84歳になった今も現役。


写真は作業場にて研ぎの仕上げをしているところ
「見る人が見れば、何をしているかすぐわかるんよ。」

・・・YYには全くわかりませんでしたが、刃ヅヤというそうです。砥石に漆(うるし)を塗って和紙をかぶせたものを親指で押さえて仕上げていきます。

 作業場に案内されまず最初にしたことは、神棚に手を合わすことでした。「大きな事故が起こらんのはこのおかげじゃ。」と真宮さん。刀といえば時代劇という軽い感覚で訪れた私たちでしたが、「ここにあるのはすべて真剣」と改めて気づき、急に緊張してしまいました。

研師を始められたきっかけは

 「子供の頃から刀が好きやった。刀を持って遊ぶのが好きで畳に穴をあけては怒られたものや。(生家の)近くに池田候専属の刀を扱っている先生がおって、その人が満州に行って、忙しくなってきてから手伝うようになったんよ。それから習った。17、8才の頃じゃ。」
後継者は
 「商売にするのは大変よ。商売でするんやったら、一本光らせるには一週間から10日かかる。今は楽しみでしよる。弟子がおって、(趣味で)習いに来るのが何人かおる。この間は孫も小さいの(刀)を光らせたで。(と、刀を研ぐときの鋭い顔から優しいおじいちゃんの顔になりました。)
 手を見せてもらいました。男の人の手にしては細い指でしたが、手のひらには硬いタコができていました。
大切にしてしているものは
 「石じゃ。砥石も天然のものはなくなって来た。良い仕事をするには道具が大切。道具を見ればどんな仕事をするかがわかる。」一本の刀を研ぐのに6種類の砥石が必要なのだそうです。そういえば、石に限らず、真宮さんの道具はどれも使い込んでいました。

     【居間には所狭しと、刀が置かれていました。】

 昨年、奥様を亡くされたそうなのですが、刀を見ていると寂しさを忘れることができるそうです。先日も50本もの刀を買い付けに京都まで足を運んだとか。「耳が遠くなってしもたわ」とおっしゃられていいましたが、まだまだエネルギッシュ。元気の秘訣は「そら、仕事しよるからなあ。でも、もう欲はなくなったわ。」とのこと。


 戦国時代は武器として、現在は美術品、歴史的資料として日本人の心を魅了してきた刀剣。戦いの道具から美術工芸品という文化財となった日本刀は光を与えられてこそ、その価値が高まります。真宮さんは刀と会話するように、愛しんでいるかのように刀を研いでいたのが印象的でした。